三島由紀夫『潮騒』

初めて三島由紀夫を読みました。確かに美しく、焚き火の前で肌を触れ合うところの描写など官能的かつ純粋で良かったのですが、表面的と言いますかどうも最後まで感情移入ができませんでした。主人公の性質が自分と正反対なのもその理由だと思います。『忍ぶ…

中河与一『天の夕顔』

美しくストイックな恋愛を描いた、ゲーテの『ウェルテル』に比較される浪漫主義文学の名作。これ『ウェルテル』より好きです。とくに僕みたいな愛に絶望した人間にとっては救いになります。心の深い結びつきだけで崇高なまでのお互いの愛情を貫き通すその姿…

高野悦子『二十歳の原点』

学園紛争の時代、独りであること、未熟であることを原点に青春を駆け抜けていった一女子大生の手記。愛に破れ、孤独に打ちひしがれ、その繊細さゆえに二十歳の若さで鉄道自殺を遂げることとなる。これはその死の直前までの日記である。だんだんと心を砕かれ…

カミュ『異邦人』

この本を読むのはこれで三度目。初めて読んだときの衝撃はないにせよ、やはり素晴らしい。あらすじだけ読むと悲劇的な作品に思えるのだが、実際読んでみると実に爽快な本である。人間は誰しも死刑を宣告された主人公ムルソーである、生きることは悲劇なのだ…

ギル・バート『自殺する前によむ本』

まえがき「この本は事実の連続で構成されています。」と書いてある。なのに、「自殺すると必ず黒縄地獄に落ちる。」・・・。事実ですか?それが。そんな迷信で自殺を抑止するつもりですか、あなたは。最低。それ以外はまともな本。名言・名句・事実が書かれ…

ヘッセ『春の嵐』

この本は読んでいて辛かった。主人公の運命が自分の過去の辛い思い出と重なり、トラウマが蘇ってきたからたから。苦しかったので、読んでる途中ドアノブでちょびっと首つっちゃいましたよ。いやはや青春は味わい深くも苦しいものですね。僕のこの苦しい青春…

ショーペンハウエル『自殺について』

また題名に惹かれて買ってしまいました。彼は厭世哲学者として有名ですが、この本の中では自殺については肯定も否定もしていない感じです。全体的に斜に構えた世界観で、僕にはぴったりでした。意外と暗くならず、励まされました。文章は哲学書にしては読み…

ラッセル『幸福論』

「自分の関心を内へ内へと向けるのではなく、外界へとふりむけてあらゆることに関心を抱くこと。これこそが幸福獲得の条件であり、それは自己説得によって可能なのだ。」 幸福論か、いかがわしいな。幸福を目的とするなんて間違ったことだ。第一、幸福なんて…

柳美里『自殺』

「もっと生きたいから、ダラダラ生きてるのがイヤだから、自殺すると決めて、それまで生きようじゃないか」 なんて清々しい生き方だろうと思った。 死は生の彼岸にあるのではなく、この世の内側にある。死や自殺という言葉を一言でも聞くことさえ忌み嫌うよ…