中河与一『天の夕顔』

美しくストイックな恋愛を描いた、ゲーテの『ウェルテル』に比較される浪漫主義文学の名作。これ『ウェルテル』より好きです。とくに僕みたいな愛に絶望した人間にとっては救いになります。心の深い結びつきだけで崇高なまでのお互いの愛情を貫き通すその姿。恋愛のために一生を棒に振った男の「本当にあの人だけは愛しつづけました」というその言葉。凡百の成就した恋なんかよりもずっと理想的な恋愛だと思います。僕はいやですけどね。